今回のテーマは、近年よく聞かれるようになった言葉、「ビロンギング」について、考察を共有します。
※参考にした情報
Why Belonging Is Important at Work: Employee Engagement and Diversity – Glint (glintinc.com)
■「ダイバーシティ」「インクルージョン」とは何だったのか?
チーム、組織開発の合言葉となってきた「ダイバーシティ&インクルージョン」。
ひとつの方向に向かって個々の多様な力を活かす、という狙いで、たくさんの組織で実現が望まれています。
そこに、さらにやってきた「ビロンギング」。
正直、HR関係者としては、「え?また?」という感覚を持ったのではないでしょうか?
「ダイバーシティという言葉がやっと浸透してきたばかり。インクルージョン実現なんてほど遠いというのに、また新しいワードを理解しないといけないの…?」
ムリもありません。
人材・組織開発かいわいでは、とにかく新しいコンセプトが次々と生まれ、なかなか消えないで細々と残っていく、という特徴があります。
それだけに、人と組織の開発というのは、答えのない取り組みなのだとも言えます。
ところが、私の感覚では、
こうした「新たな言葉のうえに、また新たな言葉が積み上がる」という連鎖は、この「ビロンギング」でいったん落ち着くのではないかと思っています。
冒頭の情報を参考にすると、わりときれいに整理して理解できます。
3つのワードをあらためて理解していきましょう。
ダイバーシティ:
「状態」を表します。
多様な個性や背景を持った人たちが集まっている、という状態です。
インクルージョン:
「行動」を表します。
ダイバーシティが実現され、そこにいる人たちが協力し、ともに働こうとする動きです。
整理すれば、上記2つは「状態」と「行動」ととらえることができます。
しかし出典元の文献によれば、「D&Iだけではじゅうぶんではない」ということです。
■「ビロンギング」こそ、チームの力が引き出される
なぜ、D&Iだけではチームや組織は不十分なのか?
調査によれば、 ビロンギングを強く感じている従業員は、そうでない従業員と比べ、エンゲージメントが6倍高いそうです。
“Glint”社
では、ビロンギングとは何でしょう?
ビロンギング:
「個々の感情」を表す。
ダイバーシティ&インクルージョンが実現した先に、個々が感じる心地よさ、帰属意識。
簡単に言えば、個々人が
「この職場こそが、自分の居場所」
「この職場こそが、自分が貢献したい場所」
「この職場こそが、自分でいられる場所」
という、主観的な思いです。
ダイバーシティもインクルージョンも、ここに至って完結するのだと、私は思います。
例えば、
多様性ある人材をそろえたところで、その多様性を活かしてどうしたいのか、目的がなければ、むしろ同質化された集団の方が仕事が早い。
多様性を実現し、協力体制ができたところで、皆が「むりやり」「しぶしぶ」の感情を持っていれば、生産的な動きはできない。
容易に想像できるでしょう。
やはりそこには、人が人として抱く自然な感情が、必ずあるわけです。
組織がそこに目を向けていないと、最後のパズルのピースは埋まらないままです。
■主観的な幸福感があって、最後のピースは埋まる
私は今、大学で芸術と教養を学びながら、会社のサービスのコアに、「アート思考」「デザイン思考」を据えています。
私には「組織とは結局、人と人の関係性」だという強い確信があり、
そこにもっとも必要なのは、
「ひとりひとりが、遠慮なく語る」ことだという確信もあります。
変化の速い時代、不安のあまり、すぐに答えを求めるのは当然かもしれません。
が、変化の速い時代だからこそ、「ちゃんと考えて、自分の声を発する」ことが、人が人らしくあるために、最低限必要なことなのです。
ビロンギングは、その環境を作るための最終段階のコンセプトになるのだと思います。
ダイバーシティもインクルージョンも、それ単体で実現したところで、「まあまあ活気のある職場」くらいにしかなりません。
この2つが両輪となり、ビロンギングへと照準を合わせることで、人と組織の幸福度・生産性は、ようやく歯車が合うのだと思います。
ビロンギングを高めるために、まずは、多様な人たちがチームの目的達成に向けて、率直な意見を交わし合う環境を整備しましょう。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
<今週の箴言> 我々に起きる幸不幸は、 それ自体の大きさによってではなく、 我々の感受性に従って、 大きくも小さくも感じられる。
ラ・ロシュフコー
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