本音を引き出す「場」のデザイン

こんにちは。

今回のテーマは、場のデザインのやり方についてです。
当事者から自然発生的に対話を発生させるために、その場をどんな風に「しつらえる」のか、ポイントをお伝えします。

まず、「対話」と聞くと、どんな場面を思い浮かべますか?
・上司、部下との1on1?
・悩み相談の場?
・クライアントとのカウンセリング?
・親子が向き合う時間?

■対話と会話の違い

対話とは、「新たな関係性を構築すること」

埼玉大学経済経営系大学院、宇田川元一准教授

対話についてのイメージをもっとも端的に伝える言葉です。
また、対話は「お互いの溝を埋めること」ともいう人もいます。

つまり対話とは、双方が本音を重ね合い、互いの価値観の違いを認識し、合意に向けてすり合わせをおこなうことです。

・合意するという目的がある
・お互いの違いを認識しあう
この点が「会話」にないところです。

■こんな状況では本音は出ない
つまり、私たちの日常のほとんどのコミュニケーションは、会話です。

職場でも家庭でも、「相手が本音を話してくれない」と悩む人は多いと思います。
「対話がしたいのに、相手が応じてくれない」ということですね。

これは何が原因でしょうか?

その原因のほとんどは相手ではなく、自分にある、というのが事実でしょう。

わかりやすく言うと、

「相手に、本音を言わせないようにしている」自分が原因
ということです。

具体的に挙げると、こんな状況なら対話は無理です。
例えば、
・相手の話を聞かないで自分の言い分だけ伝える
・相手がじゅうぶんに話していないのに、すぐに断罪する
・最初から相手を決めつけて話を始めている
・すぐに感情のスイッチが入る

もしこんな人が相手なら、本音を話せますか?

そして、もちろん理由はこれだけではなく、
・本音を話すと、自分の評価に影響が出るのではないか
・相手をがっかりさせたくない。怒らせたくない。
といった、相手の抱える感情的な問題もあります。

対話は、そもそもが「合意形成」を目的としたものであるかぎり、対話に臨むときには、お互いにマインドセットが必要です。

相手が本音を話してくれないと思うなら、
相手と向き合ったときの、自分の心持ちと態度、つまり
・不機嫌そうな顔をしていないか
・えらそうに背にもたかかったりいないか
・えらそうに腕組みしたりしていないか
・すぐに感情を顔に出していないか
・話の途中で自己主張をしていないか

といった、相手に与える「圧」について、セルフチェックがまずは必要です。
つまり、自分の態度がそもそも対話向きなのかどうか、というチェックが大前提なのです。

■本音を引き出す「場のしつらえ」のコツ
セルフチェックがきちんとできていれば、あとは、場のしつらえ、つまりデザインです。

コツは、「心理的安全性の確保」です。
つまり、相手が「安心安全を感じながら、ありのままを言語化できる」環境のことをいいます。

そのためには、何が必要か、イメージはつきますね?

1)普段からの信頼関係の構築
これは、言うまでもなく。
信頼もされていないのに、唐突に「本音を言え」といっても都合が良すぎます。
その場でできることではなく、これは日常的にコツコツと積み上げていかなければならない”貯金”のようなものです。

2)目的の共有
やろうとしているのは、会話ではないのです。
何について合意を形成したいのか、そのために本音を語り合う場を設けたい、という認識が双方に必要です。

3)環境面の配慮
個室はとうぜん必要です。
オンラインはおススメしません。双方のオンラインについてのリテラシーにバラつきがあると、落ち着いて話すことができないからです。
とはいえ、社長室や役員室でも、対話などできません。
対話とは、対等な本音の重ね合いです。
一方が「マウント」を取るような、配慮のない環境では、対話は成立しません。
そう考えると、お互いが鎧を脱いでリラックスできる環境は、もしかすると職場にはないかもしれません。

4)時間の配慮
「ちょっといい?」といった、ついでの会話のようなノリでは、対話にはなりません。
相手に不意打ちを食らわせるようなマネは良くありません。
「あらたまって、少しまとまった時間」を取ることで、お互いのマインドセットができるのです。

5)傾聴とアサーション
対話には、マナーがセットになります。
傾聴(受け入れ)
アサーション(合意を取るための主張)

これらは、対話に臨む双方が備える必要があります。
つまり、前もってデザインの一環として、日常的に使えるように”スキル化”しておくことが大切です。

いかがでしょうか。
本音を引き出すには、会話とは違い、それ相応のしつらえが必要になります。

自分だけが本音を言っても、「溝」は埋められません。
お互いにとって「安心安全」な場をつくる。
それには、その場で即応的にできることはほとんどなく、日常から相手との関係性に気を配る中にある、ということです。

皆さまの、健全な職場環境の構築に、少しでもお役に立てれば幸いです。

2022年はこれが最後のコラムです。
本年もこのコラムをお読みいただき、心より感謝します。

来年も変わらぬペースでupし続けていきます。
どうぞ、健やかな年末年始をお過ごしください。

<今週の箴言>
へつらいは、われわれに虚栄がなければ通用しない贋金である。

ラ・ロシュフコー

※note きよはらつよし(清原豪士)より転載

●リバース・フロウ 関連サービスはこちら⇒http://re-flow.co.jp/service/

タイトルとURLをコピーしました