なぜ集団は、個人よりも合理性がなくなるのか?

今日のテーマは「グループシンク」(集団浅慮|しゅうだんせんりょ))について、考察します。
すでに聞き慣れた言葉かもしませんね。

■グループシンク(集団浅慮)とは
Group Think
集団による意思決定プロセスとその結論が、個人で行う場合より、マイナスに作用することで非合理な「愚かな結論」になる傾向のこと。

(参考:EARTHSHIP CONSULTING)

これは、アメリカの社会心理学者、Irving Janis(アーヴィング・ジャニス)によって提唱されました。「集団思考」ともいわれる説です。

簡単にいうと、
個人ならまともに持っている判断基準が、集団になると生きない。むしろ、皆で、してはいけない結論を導き出してしまう、という現象です。
その結果、よりリスキーな選択肢を取ってしまう、といった“リスキーシフト”が生じます。

■グループシンクの例
「集団になると、、、」と聞くと、「ああ、日本人はそうだよね」と思う方もいるでしょうが、調査によると、対象国の回答者すべてが同じ傾向にあることがわかっています。
※「友達に合わせていないと心配になる」との問いに対しての肯定的な結果」:2017年国立青少年教育振興機構による調査

つまり、程度の差こそあれ、ホモサピエンスだったらだれでも周りからの同調圧力に合わせがち、という思考傾向を持っている、ということです。

わが国では、大きなところから言えば、
かの太平洋戦争の折、日本軍の判断と行動が、どんな結果を導いたか。
とか、
大企業の不祥事が、どんな集団浅慮で発生したか、とか。
枚挙にいとまがないほどの事例で、学ぶことができますね。

いや、もっと身近な例で私たちはいつでもそれを目にします。
例えば、こんなことも。

ある経営会議。
野心的な目標を経営から提示され、そこにいる誰しもが「ムリだ」と思っているにも関わらず、重圧に耐えかねた担当リーダーの誰かが「やります」といったばかりに、そこにいる全員が「やる」方向にコミットしてしまう。しかも、たいした戦略もなく。という場面。
その結果、会社全体としてその目標をコミットしてしまうことになります。

あるいは、

ある飲み会。
飲み会を1次会で帰りたいのに、「もう一軒行こう」という上司や同僚の同調圧力に逆らえず、2次会、3次会と付き合い、結果、その集団全員が翌日、二日酔いになっている、という場面。
これは、集団でリスキーシフトをして、翌日のチームの生産性を下げるという選択をしています。

■なぜこんなことが起きる?
私としても仕事柄、こういう場面をよく目にします。
1対1でお話していると、思慮深く、慎重で、大局観をもって仕事をされている。
しかし、いったん会議のような集団の中に入ってしまうと、まるで別人になってしまったかのように、その場の”ノリ”のような雰囲気にむしろ加担し、冷静だった思考・判断力がいっさい出ない。

なぜ、こんなことが起きるのでしょう?
先述のように、これは日本人特有の思考・行動ではありません。
だから、比較的多くのデータが、この領域については取得できます。

私なりにまとめてみました。

グループシンクが起きる4つの原因

①団結を重んじすぎる
このコラムでも私がよく批判してきた、「部活文化」のなれの果て。先輩の言うことが絶対だ、という空気です。
チームへの帰属意識を強く求めすぎるあまり、異質な意見を排除し、皆で足並みをそろえて「均質化」に向かうのです。
チームの決定に不都合な情報は、見て見ぬふりをされることが起きます。

②権力がリーダーに偏りすぎている
「あの人の前では黙っていろ」と、いう空気がこれです。
それまでの議論や共有された情報も、最後は脈絡のないリーダーの鶴の一声で決まってしまうという、どうしようもなく非生産的な状態。
かつての日本軍はじっさい、この現象で多くの尊い命が失われました。
これもまた、チームが均質化に突き進む原因になるのです。
特にDQNなリーダーの下についた人は、不幸になるよりほかありません。

③外からのプレッシャーが強い
「今すぐどうにかしないと、明日はない」という状態です。
外、というのは、何も競合他社だけではありません。企業内部でも、縦割りとなれば、こうなることはよくあります。
拙速な判断がされてしまう、わかりやすい原因です。

④合意形成のルールがあいまい(もしくは、ない)
ものすごく多いケースです。議論のルールすらもうけなくて、何が話し合えるのでしょう?
全員がルールに従う。でないと、結局合理的な議論も、最後は非合理的なリーダーの「感情論」に押されてしまうことだってあります。

では、グループシンクを避けるためにできることとは、何でしょうか?

■チームを縛る呪いの言葉

例えば、「ノリが悪い」という言葉は、呪いの言葉です。
そのつもりがなくても、その人の思慮深さ、慎重さを否定し、「均質性」「画一性」を押し付ける、とても悪意に満ちた呪いとなって、チームをしばりつけます。

こうしたグループシンクへの呪詛は、私たちから発せられる、何気ない一言から始まることもあります。

グループシンクを避ける3つの取り組み
①リーダーの行動変容
ここが一丁目一番地です。
かしこい集団をダメにするのは、リーダーだからです。
そしてその反対も、真なり。
傾聴力、判断力、プレゼン力(ボキャブラリー)をはじめとした、集団の多様化をメリットとして生かす行動変容が、何より優先して行われる必要があります。

②心理的安全性の醸成
①から始まる取り組みは、心理的安全性を醸成させる効果があります。
心理的安全性のない場では、同調圧力が働きます。結果、意見も同じようなものになりがちです。
異なる意見、違和感を、その場で発言できる雰囲気こそ、集団浅慮のブレーキとして、効果を発揮します。

③コミュニケーションルールの順守
前の②を決定づけるものは、ルールです。
例えば、「この会議はこういうルールで」という決まり事を、守りましょう。
・反対意見がでたら「いいね」とまず言う
・フィードバックをもらったら「ありがとう」と言う
・合意は、3つの反対意見が解決してから
など。

全員がこのルールに従うのも、またルールとして大切なことです。
「権力による発言の一極集中」、「同調圧力」を防ぐシンプルな方法です。

以上、グループシンク回避への取り組みでした。

■ひとりひとりはスマートでも、集団になると非合理的になる
昨年読んだ『組織の不条理』によれば、
この現象は、「じつは、ひとりひとりが合理的に判断して、組織を非合理的な行動に走らせる」ということでした。
非常に納得できる話です。

皆が、自分の気持ちに蓋をして、「組織のため」という空気から合理的に、非合理的なことを判断する。
グループシンクによる「組織の不祥事」などは、その典型ですね。

話しやすい環境をつくる。
シンプルですが、そのために何が足りないのか、今一度考えてみませんか?

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<今週の箴言>
あまり利口でない人たちは、一般に
自分のおよび得ない事柄については
何でもけなす。

ラ・ロシュフコー

※note きよはらつよし(清原豪士)より転載

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