「過信」と「過小評価」の罠 – ダニング=クルーガー効果とは?

こんにちは。
梅雨が明けましたね。それにしても年を追うごとに、暑さが異常性を増しています。
くれぐれもご自愛ください。

今回は、”ダニング=クルーガー効果”について触れてみたいと思います。

1章:なぜ能力の低い人ほど、自分が優れていると思い込むのか
ダニング=クルーガー効果とは、人は自分自身の能力を過大評価する傾向にある、ということをことを指します。
特に、能力が低い人々は、自分の能力を過大評価し、同時に他人の能力を過小評価する傾向がある。
逆に、能力が高い人々は自分の能力を過小評価し、他人の能力を過大評価する傾向があります。

この現象は、コーネル大学の心理学者デイビッド・ダニング(David Dunning)とジャスティン・クルーガー(Justin Kruger)が行った、「なぜ能力の低い人間は自身を素晴らしいと思い込むのか」という研究から、彼らの名前で命名されています。

彼らは、能力が低い人々は、自分の無知に気づく能力がそもそも欠如しているため、自分の能力を理解するためのメタ認識能力が不足している、と提唱しました。
つまり、自分が何を知らないのかを知る能力が欠如している、ということです。

この現象、私たちは日常生活のいたる場面で観察できませんか?

2章:「私は人の話を聞くのがうまい」という”傾聴下手”な上司
私の経験上、
「自分は傾聴ができている」と自己評価をする人ほど、人の話を聞かない。
「部下は心を開いて本音を話してくれている」と自己評価をする人ほど、部下から敬遠されている。
「自分がいないとチームが回らない」と自己評価する人ほど、その人がいないときの方が、雰囲気良くスムーズに仕事が回る。
これは、私が見てきたファクト(事実)です。

では、こうした現象はいったいなぜ起きるのでしょう?

ダニング=クルーガー効果に陥りやすい人々には、以下のような特性があると一般的に考えられています:

1.知識不足: あるテーマやスキルについて十分な知識や経験がない人は、自己評価の誤りを犯す可能性が高い。なぜなら、彼らは「自分が何を知らないのか、どのスキルが未熟であるのか」を理解できないから。

2.自己認識の欠如: 自分の課題や能力の限界を理解する能力が欠けている。自己評価が現実と乖離を起こしている。

3.フィードバックへの抵抗: 指摘や批判的なフィードバックに敏感な人。批判に対して怖がったり、逃げたり…中年以降になってくると、ほとんどの人がこうなります。

4.過度の自己信頼: 高い自己信頼は通常、成功を引き寄せる要因とされるが、それが過度であれば問題となる。過度の自信は、自己評価の誤りにつながり、自己成長の機会を見逃す原因となる。

だれしも自分に、多少の心当たりはありませんか?
「ない」と言う人がいたら、つまり、それがダニング=クルーガー効果に陥っていると言えるかもしれません…

3章:私たちが陥りやすいワナ
ダニング=クルーガー効果は、自己成長の障壁になります。
自分の能力を過大評価すると、自己改善の必要性を感じなくなるし、それは学習の停滞や、自己開発の遅れをもたらすことにつながります。
一方で、能力が高い人が自分の能力を過小評価すると、それは自己信頼の欠如や、適切な機会を活用するチャンスを逃すことにつながります。

職場でも、こうした誤った自己評価に陥る可能性があります。

例えば、あるプロジェクトリーダーの田中。
彼は、自分のリーダーシップ能力を過大評価しているとします。「自分はチームをうまく導いている」と考えているが、実際の他者からの評価では、その指導方法がチームの士気を下げ、生産性を妨げている、と出ることがあります。
田中さんの自己評価の誤りは、彼が自分のリーダーシップスタイルの欠点を理解できない、ということが起因となっています。
「できている」と思っているから、学ばないのです。謙虚になれないために、批判や評価に敏感になり、やり込めてしまう人、皆さんの周りにいないですか?

こうした過大な自己評価をするタイプのリーダーは、自分の能力開発の必要性を感じない傾向があるようです。
それはつまり、チームのパフォーマンスを低下させ、組織全体の目標達成を困難にする可能性があります。
また、批判的なフィードバックを受け入れず、プロジェクトに必要な変更を行わないことだってあり得るでしょう。

自己評価の誤りは、個人だけでなく組織全体にも損害を与えます。
過大評価は、「改善の余地がない」という誤った認識を生み、
逆に、過小評価は、自信が欠け、「チャンスを逃す」という可能性につながります。

4章:適切な自己評価への道のり
ダニング=クルーガー効果から逃れるには、2つの方法があるとされています。

1.メタ認知力を高める(自己認識を適正なものにする)
2.無駄なプライドを捨てて、他者からのフィードバックを受け入れること
これらが重要です。

例えば前出の田中さんは、まずは、自分のリーダーシップスタイルがチームにどのような影響を与えているかを理解することが必要です。
つまりは「メタ認知力」を高めるということです。

そのためには、上司または部下から、定期的なフィードバックセッションを受けるべきでしょう。
そして、「フィードバックを受け入れる」ことから逃げている、自分の無駄なプライドに気づく必要があるかもしれません。
リーダーなら、定期的に耳の痛い話をみずから求めていく勇気を持ちましょう。
また、自分がおこなう自分の能力評価と、他者による能力評価を比較し、「今の自分には何ができているのか? なにができていないのか?」を理解することが必要です。
そのうえで、スキルと知識を向上させるための計画を立て、教育とトレーニングを受けることです。

5章:「謙遜しすぎる能力の高い人」も同類かもしれない
いかがでしたでしょうか。

ここには、「自信過剰な能力の低い人」を例に挙げていますが、
ダニング=クルーガー効果に陥る人は、
「自分を過小評価する能力の高い人」も含まれます。

他人が褒めているのに「いえいえいえ!」と、逃げるように謙遜する。
「私になんて、ムリです」と、まず言ってしまう。
こうした人も、自信過剰な人たちと同じくらいのマイナス効果を、周りに与えてしまうのです。

謙遜は美徳とされていますが、
過剰な謙遜は、かえって迷惑なのです。

このバランスを取ることは、簡単ではありません。
しかし、私たちは誰一人として、自分一人で仕事を完結できることはありません。
周りの人たちと気持ちよく働くためににも、みずからの言動をチェックしてみませんか?

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<今週の箴言>
最も微妙な賢明は、最も微妙な愚かさにもなり得る

ラ・ロシュフコー
※トップ画像は、AIに描かせてみました。

※note きよはらつよし(清原豪士)より転載

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