”ナラティヴ”とは何だ?~理屈よりもこっちが大事~

こんにちは。
寒暖の差が激しい日が続いていますね。

大型連休が終わり、穏やかな過ごしやすい天候が、早く訪れてほしいですね。

今回のテーマは、「ナラティヴ」というものについて、一緒に理解を深めたいと思います。

■ナラティヴて、なんや?
個人的な趣味ですが、「ナラティヴ」と聞くと、数年前に上映された『ガンダムNT(ナラティブ)』『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』公式サイト (gundam-nt.net)を思い出します。

NTを、「ニュータイプ」と「ナラティヴ」に掛けたものとのことでしたが、ファンとしては、かなり異色の作品!という印象でした。

細かなことはさておき、この作品で際立ったのは、一人称、つまり「自分」からの世界観がバラバラに展開されている、ということです。
パイロットの意思と関係なく動きまくるガンダム自体、しかり。
「魂とは何か」について語る登場人物たち、しかり。
最後まで予定調和を起こさないストーリーそのもの、しかり…

さて、ナラティヴ(Narrative)とは、何でしょう。

「一人称の語り」

「ナラティブアプローチ」野口裕二著

シンプルに言えば、この一言です。
近年では、マーケティング界隈でよく使われている言葉でもあります。

私の専門とする人材・組織開発でも、「ナラティヴ・アプローチ」という手法が、最近用いられるようになってきました。

ナラティヴは、多くの媒体で「物語」とも訳されますが、違います。

「物語(ストーリー)」は、起承転結があり、必ず「オチ」があるように作られたものです。
「ナラティヴ」は、そうした筋立てはいっさいなく、淡々と「私」を主語として語られる自分の経験・想い、のことを言います。

■ナラティヴを引き出すと、起きること
ナラティヴを引き出す、とは、相手から「予定調和なく、そのままの言葉を引き出す」ことです。

今、様々な企業や組織で、なぜこのことが注目されているのでしょうか?

それは、私たちが向き合う問題の、「質」が変化しているからです。
日常的に起きる問題の本質は、大きく分けると2種類です。

①過去、どこかで起きている問題。
つまり、論理的に突き詰めれば必ず解決する、「正解がひとつだけ」の問題。
この種の問題は、人、モノ、お金を、とにかく注ぎ込めば、いつかは解決するものです。

②初めて遭遇する問題。
つまり、解決の仕方も、正解もわからない問題です。
今でいえば、ウクライナ侵攻、疫病の感染爆発、など、いくら過去の事例を探っても、正解が見つからない問題。

そして私たちの日常で起きる問題の、かなりの割合が、②の「初めて遭遇する問題」です。
つまり、いくらロジカルシンキングで突き詰めても、正解に行き当たらない、過去に正解がない問題が、一定割合を占めているのです。

簡単に言えば

人から与えらえた答えが、この問題の答えではない。
ということです。

理屈では解決できない、複雑な問題。
とも言えます。

ここで必要なのが、人によって与えられる、役に立たない答えではなく、「自分の中にある、まだ言葉になっていない想い」
つまり、”ナラティヴ”なのです。

ナラティヴは、もちろん一つではありません。
人の数だけ存在します。

正解がない、正解までのプロセスがない、という問題に行き当たったとき、ひとり一人が、その問題を「どんな視点」で、「どんな想い」で向き合っているのか、言葉にするのです。

そうして語られる言葉が、その人だけの「ナラティヴ」です。
予定調和を意識しない、自分だけの想いです。

■そろそろ「対前年比」という目標をやめよう
世界は、大きく音を立てながら、色んな「前提条件」を覆しています。
環境の悪化、人口の爆発、疫病の蔓延、天災の増加、AIの発達、などなど。

先行きもどんどん予測が難しくなっていますね。

そんな風に、目まぐるしく移り変わる環境にいながら、いまだに一部組織は「対前年比、●●%を売り上げよう」とか言っています。

つまり、「過去」に執着し、過去にあった環境を前提に、考えているのです。

さすがに、どこを見て目標を立てているのか,,,
目標の立て方そのものに無理があると思いませんか?

こうした目標を掲げている限り、目標達成までのプロセスも、やはり「過去」のやり方を、ちょっと工夫するぐらいの程度で、収まってしまいます。
結果、いつも通りの目標に、いつも通りのやり方を当てはめた、言い訳程度の仕事しかできなくなっていくのです。

もちろん目標は、あってしかるべきです。
が、そんな過去ばかり見てる味気ない目標は、誰だってやる気が起きません。
もっと大胆で、鮮やかな組織の将来像から、それにふさわしい目標であるべきです。

「対前年比、●●%を売り上げよう」よりも
「5年後に、業界でリアルに1位になろう」です。

初めて遭遇する問題・課題を目にしたとき、
頼りになるのは、「ナラティヴ」です。
だって、初めて遭遇する問題・課題には、正解がないのですから、一人ひとりから出てくる想いをたぐっていくことでしか、問題の本質には近づけません。

■大切なのは、「問題の設定の仕方」なのです
ナラティヴは、「一人称の語り」です。

でも、多くの大人は、ナラティブを言葉にすることが苦手です。
これまで永い間、ずっとロジカルな、価値ある語りを強制されてきたからです。
「正解は必ずあり、仕事場でモノを語るとは、そういうものだ」と言われてきたからです。
だから、正解でないかもしれないことを言葉にすることが、大人は苦手なのです。
そうです。若者以上に、ビビりな面を、大人は持っています。

しかし、正解がない問題がこれほど多い中で、なんとか問題の本質の迫るには、「問題そのものをどう見ているか」、多様な見方、感じ方を、集約させる必要があるのです。
つまり、
人の数だけのナラティブが、うまく折り重なったところに、解決のヒントが生まれるはずなのです。
問題そのものを、まったく違うものとして定義しなおすことだってできるはずです。

問題の設定の仕方を変えましょう。

つまり、企業も組織も、個人に「良い問いかけ」をするのです。
社員の数だけ、ナラティブは存在します。

例えば、1on1やコーチングは、ナラティブを言葉にさせる取り組みです。
そこに批判や否定をすれば、ナラティブは出てきません。

組織は、「想い」というピースを、丁寧に拾える環境を、整えてあげましょう。
過去に正解が存在している問題の方が、もはや少なくなっているからです。

お宝は、社員の胸の内に眠っているかもしれません。

本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。

<本日の箴言>
自分自身を信頼すれば、
他の事に対しても
信頼が生まれてくる。

ラ・ロシュフコー

※note きよはらつよし(清原豪士)より転載

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