コンセプトを作る人がもつべき力

こんにちは。
年が明けてはや2週間近く。世の中は通常運転とはいかないまでも、「今年こそは力強く楽しく生きよう」とする人たちのエネルギーが、満ち満ちているような雰囲気を感じます。

前回のコラムで、私が理想とするリーダーやエグゼクティブのありようを書きました。

それは、「創発をしかける人」

総和を上回る効果を生むには、「コンセプトを作る力が8割で、タスクをこなす力が2割」が必要とお伝えしました。
言い換えれば、「構想力8:遂行力2」の配分です。

そして今回もまた、皆さまに問題提起をしたいと思います。

■コンセプトを作る人が、そうでない人に潰されてしまう現状
「現実を見ろ」
「エビデンスは?」
「それやって儲かるの?」

仕事の現場でイノベーションが起きない理由は、深くも考えずこんなセリフを普通に吐き出す人が多すぎるせいだと思っています。

コンセプトを作る人が育たない。
つまり、組織を中長期で進化させるのに必要な、「ビジョン構想」ができる人が育たないのは、
「言われたことを文句言わず、粛々とこなす人」、つまりタスク遂行タイプが、あまりにも幅を利かせていることが、最大の要因だということです。

もちろん、組織には両者が必要で、うまくバランスされて運営されるのが理想なのですが、さらに言えば、タスク遂行タイプが、ビジョン構想タイプの言葉を理解できず、
「非現実的だ」
「理想を語るな」
と中傷し、聞く耳を持たない現状を許してしまっている「組織風土」にこそ、その真因があるように思います。

■構想力がなくて、なにが進化なの?
前回コラムでも述べましたが、諸外国と比べて30年間日本だけが「ひとりデフレ」に陥っている原因は、
そうした「構想よりも、遂行に価値を置く人」、「ビジョン作りよりも、タスクしかこなせない人」があまりに幅を利かせてきたことが原因だと、私は仮説として置いています。

「唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」
コロナ禍が本格化した頃、この言葉がもてはやされました(注:ダーウィンが言ったものではありません)。

この言葉が流布した背景を思えば、やはり「変化」の必要性は誰しもが感じていることなのでしょう。

でも、口ではそう言いながらも、目の前のこと、上司から言われたことだけをこなす現実が変わっていないとすれば、もちろん組織に変化は望めません。

変化に対応し、進化を遂げるためには、「創発」の必要性を理解し、実際にそれをしかけられる人を増やすことが、これからの組織には必要な取り組みです。

つまり、コンセプトを作る力(構想力)が、もっと注目され、大切にされなければなりません。

まるでアーティストのように、美意識をきたえ、現状をとらえなおし、価値を再定義できる人たちの言葉に、もっと耳を傾けなければなりません。

もちろん構想力しか持たない人というのは、ただの夢想家です。
しかし、構想なくして、いったいタスク遂行集団はどちらに向かって進んだら良いのでしょうか。

進化は、
皆が見えないものをとらえ、形として見せる人がいることから始まります。

■変化を受け入れる胆力
ビジョン構想タイプであろうと、タスク遂行タイプであろうと、この混沌とした時代を生き抜くためには、共通して心得ないといけない大前提があると思います。

その大前提とは、事実を見ることです。
つまり、「ファクトを認識する」ための胆力が必要です。

イノベーションを阻害する要因として、少なからず存在するのは、ファクトに正面から向き合えないということがあります。

ファクトを認識しないで、
「なんで皆、やってくれないんだろう」
「こうなったのは、私のせいじゃない」

目の前の事実を検証もしないで、
すぐに人のせいにしたり、
ファクトにふさわしくない勝手な論理をあてはめようとしたり、
感情を先走りさせたり、
という人が少なくないのではないでしょうか。

私は、ファクト認識をするためには、まずは事実と向き合う「胆力」が必要だと思っています。
たしかに、期待通りでない事実に向き合うことは、つらいことです。

しかしながら、
「そんなはずはない」という立場と、
「検証して次に生かそう」という立場では、
その後の動きに天地ほどの差が出るのは想像できますね。

失敗をだれかのせいにしたり、なかったことのように隠したりする組織は、いつまでたっても進化できません。
「過去の参照データ」がいっこうに蓄積されないからです。

「創発をしかける人」に必要なことは、まずはファクト認識をすること。
さらに、そんな混沌とした状況を楽しめるくらいの、さらに洗練された胆力が必要だと思います。

■「問い」を立てる力をつける

そしてその胆力を身につけるには、
・ユーモアのセンス(メタファー表現力)
・美意識
などがきたえられる必要があります。

ファクトを認識し、変化すら楽しめるくらいユーモアのセンスや美意識があれば、どのような状況においても、進むべき光明が必ず見い出せます。

そして、そのために必要なのは、「問い」を立てる力です。
困難な状況にあって、
「どうしよう」と悩む人もいます。
しかし、

「さて、この状況は長い目で見て、どれくらいインパクトがあるだろう?」
とか
「この状況の面白いところはどこだろう?」
とか
「この状況をくぐり抜けるすごい人たちって、どんな人たちだろう?」
などなど。
「本質的な質問」(アップチャンキング)ができる人は、
ただのユーモアだけではない、
希望のような視点を周りに与えることができます。

この質問は、バラエティーが増えるほどに、可能性も増えます。
特定の人だけが持つ先天的なものではなく、鍛えれば必ず磨かれるものだと思っています。

こうして、「洗練された胆力」、「問う力」を鍛えることで、仕事ばかりでなく、日々の生活がさらに彩あるものになっていくでしょう。

最後にもう一度繰り返します。

事実を事実としてとらえましょう。
ユーモアのセンスを磨きましょう。
これらは、トレーニングできるのです。

(当社では、セミナーやコーチングなどを通して、こうした力を養うためのトレーニングを行っておりますが、こういった能力を身につけるためのセミナー(無料)を本年より再開することにいたしました)

変化を楽しみ、未来に希望を見出すために、日々の生活から感性を鍛えてみませんか。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。

今週の箴言
(ラ・ロシュフコーより)

あまり利口でない人たちは、一般に自分のおよび得ない事柄についてはなんでもけなす。

※セミナー情報
2022年初めてのセミナーテーマは、今回のコラム内容でも触れた「本質的な問い(アップチャンキング)を身につける」です。
2月下旬(2月22日)に開催予定ですが、詳細はコラムにてupしていきます。

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