”アンラーニング”の絶対公式

こんにちは。
春分を過ぎたものの、今年は非常に厳しい寒さが続いていますね。

保養所のある熱海ではこの時期、日本一早咲きと言われる桜が満開となり、さらに梅も見ごろを迎えている、というたいへんな贅沢を味わえています。

さて、今年はこのコラムを通して、あるテーマに大きめのフォーカスを当てています。
それは、「これからの時代に必要な思考技術」です。

VUCAの時代に、しなやかに豊かに生きられるヒントになればと、私なりに学び、経験してきたことを整理しながら、具体的なフレームワークに落としてお伝えしていきます。

今回のテーマは、「アンラーニング」についてです。
じつはこのテーマを掘り下げようと思ったのは、中学3年の次男坊の、学校の授業教材がきっかけです。

■アンラーニングという“学習の取捨選択”
次男坊のクラスでは、国語の選択テーマとして、「メタ認知」、「アート思考」そして「アンラーニング」の3つから選び、学ぶという授業が進められているそうです。
彼自身、ふだんから私が何かにつけ「アート思考」の話をしているため、興味をもってこのテーマを選択し、面白く勉強している、とのことでした。

私が普段、このコラムでも「メタ認知」と「アート思考」を結び付け、繰り返しトピックを変えながら掲載していますが、まさか中学生でこうしたテーマを学べる時代だったとは、驚きました。
まさに「正解のない時代を生きる力」として、学校もこうしたフレームワークの必要性を強く認識しているのでしょうね。
そして、とうぜん興味を持ったのがもうひとつの「アンラーニング」というテーマです。

私は人の「行動変容」について学び、実践し、コーチングを通してサービス提供している専門家ですので、当然この「アンラーニング」がどれほど大切なテーマかは知っていました。
そしてあらためて今回、せっかくなので深く掘り下げてみることにしました。

まず、定義からです。
アンラーニングとは、「学習棄却」と言われています。

簡潔に説明すると、

「これまでに学習してきた知識や価値観を、取捨選択すること」です。

棄却といっても、学んできた知識や身につけたスキルを単に捨て去ることではなく、
これからの時代を見据え、みずからを進化させるために取捨選択し、発展させる、または文字通り棄却する、ということです。
そのために、自分が潜在的に持っている価値観と向き合い、修正を図ることが必要となります。

■学びを止めるミドルとシニア|VUCA時代に「学歴」

最終学歴。
私がもっと信用していない日本語のひとつです。

私は今年50歳になりますが、最終学歴というのは、ほぼ30年近く前に卒業した大学のことを言うらしいです。

30年前に通過した大学が、あたかも30年間、私の実績として評価されるごとく扱われるのが、いまだこの国では起きています。
例えば、私が社会に出て、不適合者の烙印を張られ、ドロップアウトして中年ニートになったとしても、私は「●●大学卒」なのです。
また、例えば、私が何かのはずみで政治家になってしまったり、何かのはずみで宇宙飛行士になってしまったり、何かのはずみで大企業の経営者になってしまったりしても、同じく私は「●●大学卒」です。

人は、卒業した大学の格で、値打ちが決まるのでしょうか。
大学を出てどれほど失敗しても、大学の格が高ければ、それは「なかったこと」にされるのでしょうか。

私は多くのミドル・シニア層とのお付き合いをしてきましたが、たいへん残念なことに、大学を卒業してから学びをやめてしまう人は、驚くほど多いのです。
そして実際、学ばない人からは深みも教養も感じません。
さらに、そういった人たちに限って、どういうわけか「あの人は、●●大学を出たらしい」と、30年以上に通過したらしい大学のことを評価し、ダメだとかすごいとかコメントをするのです。

私は経営者ですが、もちろん一般企業にも20年ほど勤めていました。
その期間、
高学歴なのに仕事がぜんぜんできない先輩・後輩社員も見てきましたし、
大卒でないけど仕事がめちゃくちゃできる派遣・契約社員も見てきました。

そして事実として、彼らの待遇は「最終学歴」によって決められる…

さらにこのことが、ある程度の役職についてしまったミドル・シニアの成長を止めてしまうことになるのです。
あたかも「えらくなったら、学習なんかしなくても良いんだ。だって俺たちは賢いんだから」とでも、言うように。

■中高年こそアンラーニングを
最終学歴はあてになりません。誰もがわかっていることだと思います。
「ライフシフト」的考え方でも、「人生100年時代、次々と新しいことを学び続けることがみずからの価値を維持していくためには必要だ」と言われています。

かくいう私も、ずっと「自分が50歳になったら大学に入って学び直したい」と思ってきました。
そして、今年50歳になります。
有言実行(あまり人に言っていないので、不言実行ですが)、
先週、ある大学に願書を提出したところです。
入学許可が下りれば、4月からは、晴れてもう一度、大学生です。

中高年には、なにかと最近、世間の目が厳しく向けられています。
ニュータイプといわれる若い世代を「邪魔するな」と言われ、
リモートワーク時代になって「いてもいなくても良い」と言われ、
まるで新時代の足かせのような言われようです。
それは、卒業大学の威を借りて、どういうわけか学びを放棄してしまったツケもあるのではないでしょうか。

だから、中高年こそ、アンラーニングが必要なのです。
時代を切り開くであろう人たちは、中高生ではなく、若い世代です。
今まさに、これからの時代にふさわしい自分の価値観を見直さないことには、完全に「足を引っ張る人」になってしまいます。

■発見した「アンラーニングの絶対公式」
いち中年である私も、人さまの行動変容に関わる立場として、自分なりにこのアンラーニングの方法を掘り下げてみました。
フレームワークとして具現化し、思考技術としてきちんと人にお伝えできないか、と。

つまり、アンラーニングを実践するときの、みずからのスキル・価値観を取捨選択するための基準を明確にするのです。

そして、ゆるぎないひとつの公式を考案しました。
それが、これです。

アンラーニング実践のための、取捨選択基準の公式
「① フィードバック × ②好奇心 = ③要・不要」

解説します。

① 「フィードバック」とは?
言い換えれば、他者評価です。今の自分のありのままを評価する他人の声、のことです。

なんのためにやるのでしょう。
それは、「自分を知る」ためです。

コーチングでいえば、クライアントはまず他者評価に耳を傾けますが、あれは、他者の声を通して自分を知るためにやっているのです。
いわゆる360度評価というものですね。

方法は他にもあります。
世代間、または異業種間の「交流」です。
つまり、異質との出会い・交流が、「今の自分を知る」には大いに有効です。

中高年になると、自分の言うことを素直に聞いてくれる部下ばかりと付き合いたがる人がいますが、
そういったタイプの人は、若手から迷惑がられるだけで、自分からはなにも新しい価値を提供していないことに気づいていなかったりします。

中高年は、自分にぺこぺこ頭を下げない「よその若者」と交流していただきたいものです。
そして反対に若手は、同じ価値観の仲間ばかりとつるまず、ひるまず、中高年に歩み寄ってみてはいかがですか?

②「好奇心」とは?
言い換えれば、「伸びしろ」です。
どんなことだって、学びと成長の速度は、好奇心がエンジンとなるはずです。

反対に、好奇心が働かないことには、伸びしろはありません。
やっても苦痛なだけです。

私は銀行員時代、恥ずかしながら、簿記の資格試験に2度続けて落ちました。
当時、勉強をしながら「なんて無味乾燥で、面白くないんだ」と思っていたのを思い出します。

好奇心が働く分野に素直に目を向けてみましょう。
好奇心こそが、成長の伸びしろです。

では③の「要・不要」とは?
つまり、取捨選択する基準が明確になった状態です。

① の「フィードバック」で、他者の評価によって自分の強みや課題、価値観と向き合い、
② の「好奇心」によって、伸びしろのある分野に素直に目を向ける。
すると、アンラーニング実践において③の「要・不要」つまり、これからの自分が取捨選択すべき基準が明確になるのです。

ここで明らかになった取捨選択基準によって、
みずからが「捨て去る」べきスキルや価値観、
「学び・発展させる」べきスキルや価値観が

振り分けられます。

■アンラーニングは行動変容を加速させる
いかがですか?
アンラーニングは、まずは自分と向き合うという、あまり心地よいと言えない時間から始まります。しかし、「正解のない時代」において、最終学歴のようなあいまいなものに安住し、新しいことを受け入れない生き方をする方が、ものすごくリスキーであることはおわかりかと思います。

耳の痛い話に、あえて耳を傾け、
過去の自分と向き合い、
どう自分を進化させるのか。

行動変容は、まさに「何をやめるか」が非常に強く問われます。
そして、自分の持っている「強みをどう伸ばすのか」も大切にされます。

アンラーニングの公式に当てはめて、整理してみませんか?

皆さまの、さらに豊かな人生のお役に立てれば幸いです。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※当社オープンセミナーでは、今回の内容にも今後、もう少し詳しく、そして身につけやすいヒントとして提供してまいります。

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<今週の箴言>
(ラ・ロシュフコーより)

われわれが小さな欠点を認めるのは、
大きな欠点を持っていないと、
人に信じさせるためである。

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